REVIEW

楝蛙『ひろいもの』感想|かおるの、しゃべっていないときの顔

『ひろいもの』は楝蛙の作品です。

楝蛙『ひろいもの』の感想。かおるの横顔、夜道の光と影、玄関での表情について。

作家・サークル
楝蛙
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かおるが畳の上で腕に顔を乗せて、落合を見ている。

『ひろいもの』で私が好きなのは、この横顔。少し前まで泣いていた子が、今は黙って相手の顔を見ている。その顔を大きなコマで見せてくれるのがいい。何を考えてるんだろう、と目元を見たくなる。

楝蛙の単行本『おもちかえり』に入っている、最初の一話。公園で酔いつぶれていたかおるを落合が見つけ、自分の部屋へ連れ帰るところから始まる。かおるは、落合の知人・健斗と付き合っている。

泣き顔を見たら、かおるのことが気になった

借りた大きなシャツを着て、うつむいているかおる。そこから、すがりついて泣く顔が大きく入る。

この泣き顔、つい見返しちゃう。

彼氏の浮気を見てしまった話をするかおるの、伏せた目。目元を追う横長のコマもあって、私はセリフを読んでいても、そっちが気になる。口にしていることと、まだ言えないことがあるように見えて。この子の話をもう少し聞いていたくなるんだよね。

部屋に来る前、落合がかおるを背負って歩くところも好き。街灯の下に二人の後ろ姿があって、そのまわりは暗い。夜中の道って、少し先に明かりがあるだけでやけに遠く感じることがあるけど、あの感じ。部屋に着くまでの道をちゃんと描いてくれるから、私はここから二人を気にしてしまう。

あの横顔のあとに、玄関でその顔をするんだ

終盤の畳の部屋には、「………」の吹き出しがある。

腕に顔を乗せたかおるの横顔と、この点々。ここで何を言おうとしたんだろう。落合のほうを見て、結局言わなかったこともあるのかな。そんなふうに考えていると、このコマだけ少し長く見ていたくなる。

私はこういう、しゃべっていないときの顔に弱い。エロ漫画を選ぶときも、表情の好きな作家さんはやっぱり気になる。

それで最後に、あの玄関。

大きなリュックを背負って現れたかおるが、首をすくめて「てへ…」と笑う。

いや、その荷物。

あの泣き顔を見たあとに、こんな顔で来られたら笑ってしまう。リュックまで含めて、かおるの登場の仕方がかわいい。落合がこのあと何を言うのか、玄関の続きもちょっと見たいんだけど。

作品情報

『ひろいもの』/楝蛙

初出:『快楽天』2020年1月号
収録:『おもちかえり』(ワニマガジン社、2020年10月15日発売)

公式出典

初出・収録情報と単行本の発売日は、ワニマガジン社の書誌情報で確認した。